コラム

ナッジの有効活用によるCOOL CHOICE

ナッジとは、ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー博士の行動経済学理論です。
 
中部大学 原理史先生とご一緒に、中部地区8県市の地球温暖化防止活動推進センターによる「COOL CHOICEの普及啓発にナッジをどう有効活用するか」というテーマで研究活動を行ってきました。全体運営は、愛知県地球温暖化防止活動推進センター(一般社団法人環境創造研究センター)事務局長 清本三郎氏です。
 
ナッジとは、「人々が、強制によってではなく、自発的に望ましい行動を選択するように促す仕掛けや手法」のようなもの。例えば、昨今の新型コロナ対策としては、お店のレジに並ぶ際に、距離を空けられるよう、立つ位置にマークをつけている店舗をよく見かけるようになりましたが、これはナッジの中の「間違いの予見」というものです。
 
「間違いの予見」とは、人が間違いを犯すことを前提としてエラーを未然に防ぐ工夫を組み込むこと。例えば、キーをつけたまま車から離れようとした時に、ブザーが鳴って合図してくれるというのも一つです。オランダの国際空港では、男性用トイレにハエのマークをつけたところ、そこをめがけて使用するためトイレの清掃費が大幅に削減されたという効果も。
 
「~しなさい」という強制ではなく、法的、制度的な規制でもなく、自然にそのような行動をとってしまう仕掛けのようなもので、無理なく実践できる点がポイントです。
 
環境行動は、地球温暖化が進み、気候変動が進行しても、直接的な痛みが自らに伴わない限り、なかなか実践できない面があります。今回の新型コロナウィルスをもとに考えれば、感染リスクが直接自分や家族や社会に及ぶ危険が実感しやすいため、「自粛」という行為をとりやすいのですが、環境問題は必ずしもそうではありません。その結果、自分ひとりくらいがんばっても意味がないという感情や環境よりも優先したいものがある等の理由で、なかなか実践できない。主体性、自主性、内発性が育ちづらい分野です。
 
そこでナッジを使うことで、強制ではない方法で行動変容を促すことをねらいます。
 
第一弾の成果として、原先生を中心に執筆した論文「ナッジ活用のためのCOOL CHOICE普及啓発事例のデザイン分析」(2020年3月環境共生学会)が公開(J-STAGE)されましたのでお知らせします。
下記よりご覧いただけますので、ご関心のある方、ぜひお読みいただければ幸いです。

環境共生学会論文
 

 
下の写真は、中国の小学校で、隣どうしの距離をとるために、手づくりの帽子を作ってかぶるというもの。強制ではなく、かぶりたい生徒がかぶるらしいのですが、それぞれにユニークなデザインで、なかなか楽しそうな取り組みです(NHK BS1ニュース 2020年4月30日)。
 

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